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自然

北斗の水くみ写真展

「北斗七星が北の海に雄大な姿で、
水をくむ瞬間をカメラにとらえよう」と、
「北斗の水くみ」写真展実行委員会を発足し、
2008年から2019年まで行われた「北斗の水くみ」写真展は、
2019年度を持ちまして一区切りといたします。

これまで「北斗の水くみ」写真展に
ご応募頂きました皆様方に心より感謝申し上げます。

写真展を振り返って

北斗の水くみ写真展の過去12年間の取り組みを振り返り、これまで携わっていただきました外部審査員の先生方に寄稿いただきました。

北九州市立高等学校
梅林 信治
「北斗の水くみ写真展」に寄せて

 私が、「北斗の水くみ(水くみ北斗)」という言葉に、初めて接したのは、40年以上前のことでした。当時、福岡教育大学平井研究室の末席を汚させていただいていた私に、平井正則先生や諸先輩方から、「福岡県の北部沿岸地域では、周極星となる北斗七星が水平線ぎりぎりに子午線を下方通過する現象を観察することができるのではないか。」というお話がありました。後日、地方紙にいまでいう「北斗の水くみ」の写真が掲載されたことで、観察可能であることが証明されました。

 一方、「北斗の水くみ写真展」に多数応募されてきた写真の中に、静水面が鏡面のようになり、北斗七星の姿を映し出している作品も時折みかけました。

 このことから、北九州市の八幡から黒崎にかけての地域では、かつて浅い海であった洞海湾が波静かなときに、北斗七星の姿を映し出していただろうと容易に想像できます。

 私見ですが、このように静水面に北斗七星の姿が映し出されていることも「北斗の水くみ」という言葉に当てはまるのではないかと思っています。

 さて、「北斗の水くみ写真展」の審査員として最初から関わらせていただいたひとりとしての感想ですが、作品のレベルが年ごとに高くなっていることを強く感じています。
今回十二年間の入選作品をすべて掲載するということですが、年度ごとの作品を比較していただけるとそのレベルの向上にはすぐに気づくことができると思います。

 特に、デジタル一眼レフカメラの著しい性能進化には驚くばかりです。また各種フィルターを使用した作品、デジタル現像とよばれる画像処理を施された作品などなど、これはプロの写真家の作品ではないかと思われるような作品も多くあったと思います。

 一方で、手軽なコンパクトデジタルカメラやスマートフォンでの撮影の作品もあったと思います。作品審査時に何度かお話しさせていただいたと思いますが、撮影機材別の部門賞などもあってよかったのではないでしょうか。
デジタル関連の技術進歩により、天体写真入門のハードルが技術面でも費用面でも大変低くなっています。一人でも多くの方が天体写真に関心を持っていただけるきっかけとして「北斗の水くみ写真展」が「むなかた電子博物館」というWEB上で実施されたことで、福岡県だけでなくさまざまな地域から応募があったことにも大きな意義を感じています。

 私は、北九州市内を中心とした地域で幅広い年齢層の市民の方々に「星のお話し」をさせていただく機会が多くあります。夏から秋にかけての「星のお話し」には「北斗の水くみ」は欠かすことができない話題になっています。「北斗の水くみ写真展」が今年限りで終了してしまうことは、とても残念ですが、多くの方が星についての関心をもつことのきっかけとなったことは、「むなかた電子博物館」の目的にかなった大きな業績だったと思います。

元 北九州市立児童文化科学館館長
上野 正雄
「北斗の水くみ写真展」との関わり

 私が、この写真展に関わるようになったのは、北九州市立児童文化科学館の館長をしている時に、当写真展の審査委員長をされている平井先生からのお誘いがあったからです。

 当時、児童文化科学館で「天文クラブ」や「天文講座」、「星空観望会」などの事業に携わり、多くの子供や大人たちに「星空の素晴らしさ・美しさ」や「天体観測の楽しさ」などを知ってもらうと共に、「星空や宇宙の不思議」に興味や関心を持ってもらい「天文の普及」等に関わっていました。

 個人的にも趣味として「天体観測」や「天体写真撮影」等を行っていたので、平井先生からのご依頼を引き受けることにしました。

 なお、正直に申しますと、「北斗の水くみ」と言う「言葉(現象)」は、児童文化科学館の天文クラブの講師の先生からお聞きするまでは知りませんでした。北緯35度付近で北側に海の開けた地域でのみ見られるという特異な現象であり、「北斗の水くみ写真展」に関われることに大変興味を持ったしだいです。

 「惑星写真」や「星座写真」を撮影した経験はありましたが、写真展に応募されてくる写真を拝見して、第一に思ったことは「すごいな!」と言うこと、応募作品のレベルの高さに驚きました。

 私が撮っていた星座写真は、「ピント」と「露出」に注意を払うのですが、応募されてくる星景写真では、「ピントや露出」は勿論のこと、水平が出ているかなど「構図や芸術性」等にまで注意を払う必要があり、奥の深いジャンルだと思いました。また、年々の技術レベルの向上にも目を見張るものがありました。

 この写真展に関わる事ができ、私自身も勉強になり、良い経験をさせていただきました。

 このような写真展が10年以上も継続して開催されたことは、事務局の皆さんやスタッフの皆さんのご努力のおかげだと思います。改めて敬意を表します。

 また、機会があればこのような写真展を再開していただければと思います。

 最後に少し残念なことは、私が写真展に関わり始めた2015年は、43作品の応募がありましたが、応募点数が年々減少し、昨年は14作品の応募しかなく、この写真展が広く周知されなかったことです。反省材料の一つだと思っています。

日本スペースガード協会
藤原 智子
北斗の水汲みによせて

 「ボクね、すごいこと発見したんだよ。秋になると、北斗七星が宗像の海で水を汲むんだよ。」

 そう平井先生が得意気に話してくれたのは、福岡市から宗像市にある福岡教育大学へ向かう途中の、国道3号線を走る車の中でした。私が福岡へ引っ越してきて、まだ間もない頃でした。静岡県浜松市で育った私にとって、海は陸地をひたすら南に進んだ突き当りにあるもので、「北斗七星」と「海」は同じ視界には入らない、ファンタジーのような組み合わせでした。しかも柄杓の形をしている北斗七星が海の水を汲むだなんて、随分ロマンチックな発想です。乙女のような平井先生に、思わずくすりと笑ってしまいました(心の中で)。そんな私のことなどまるで気にせず、平井先生は続けます。

 「北緯34度だと、北斗七星の柄杓の底がちょうど地平線をかすめるんだよ。で、世界中の海岸線を調べてみたら、北緯34度の陸地で北側に海があるのはここだけだったんだよ。」

 まるで世界各地を調査してきたかのように、熱く語ります。私にとってファンタジー現象だった「北斗の水汲み」は、日本海玄界灘に接する宗像では確かに現実でした。

 平井先生から「北斗の水汲み」写真展の審査員を仰せつかったのは、それから数年後のことでした。天体写真は昼間の風景を写すのと全く異なる工夫が必要で、思うような写真に仕上がらないこともしばしば起こります。しかも水を汲む北斗七星がテーマですから、星と一緒に海も写す必要があります。太陽が出ていない時間帯に暗い水面を捉えるのは、これもまた至難の業です。しかし応募された作品は、そんな困難をものともしない力作ばかりでした。主役である北斗七星は勿論のこと、暗い玄界灘の荒波やシルエットのように浮かぶ沖ノ島、星と見まがうたくさんの漁火、可憐に咲くハマユウの花など、宗像ならではの美しい夜の海の風景が切り取られ、1枚1枚に工夫が凝らされていました。私自身、5年前に仕事のため福岡を離れることになり、同時に審査員の仕事とも縁がなくなってしまったのですが、あの時みなさんの写真を通して見た北斗七星と宗像の風景が、今なお私の心に強烈な印象を残しており、時折すごく懐かしくなります。

 2013年には、北斗の水くみ海浜公園が神湊にオープンしました。宗像を象徴する美しい風景が、また一つ増えたのではないかと思います。去年まで12年続いた写真展は一区切りつけ、今年から実施しない旨伺いました。少し寂しい気もしますが、星空には写真だけではなく、自分の目で見る楽しみもあります。次に宗像を訪れる際は、北斗の水くみ海浜公園で、玄海の水を豪快に汲む北斗七星を楽しみたいと思います。他の地域では決して叶わないロマンチックな現象が、ここ宗像では現実になるのですから。

「北斗の水くみ」写真展 総括

福岡教育大学名誉教授(理博・天文学)
「北斗の水くみ」写真展実行委員長
平井 正則
審査の理念
1.博物館活動の目的と写真展

 むなかた電子博物館活動とは10年ほど前の通念として政治家の“はこもの”主義の批判が定着した時期で全国各都道府県にて政治家の提案に質的変化の起こる時期であった。国では観光が施策として進み、多くの大学では学術的な基礎を隠し、国民への見やすさを重視して、“観光学”や“観光学部”、“観光学部教授”なる看板の架け代えが起こった時代であった。中身よりみかけに学術を隠す時代の到来であった!そのような時世のなかで宗像市でも熱心で考古学的な動機、地元考古学マニアなどによるロマンを抱く歴史博物館創設の動きは、時世柄、大声がなかなか行政に届かない、続かない時期であった。そこに、経費も低く抑えられ、人員雇用も少なくて済むITを基本とする博物館構想が“はこもの”でない、経費も合理的な博物館構想の動きが進んだ。重い施設館構想より、画像やソフトの秘策!により、当時開発が進みつつある、IT技術を使って、展示物をひっくり返したり、立てたりできる動画サイトの工夫があれば、実際の遺物をガラス越しに眺める従来の博物館以上の興味ある展示仕方になるとか、宗像の諸遺跡を前にスマホやタブレットなどIT機器で実地に歴史や構造の可能な説明情報を得て、それぞれの遺跡に関する専門家の意見を録画・録音により提供可能なものを構想した。特に、場所、時間、夜間観察の注意、観察時天候情報など個人的に遺跡、現象の紹介を行うことも可能と考え、新たな自然現象や遺跡環境に対面できる臨場的な支援ソフトにより、簡単に行えるという博物館構想の展開を夢想したのである。特に「水くみ」現象については地理的、天文的に非常に臨場的な風景、天候、シーイング、情景に出現する漁火の作る動画の景色を印象的に訪問者に必要な情報などを提供することは重大であった。

 さらには、地域生活者のもつ天候情報、観察場所の選択などについて互いに通信し合うなら、つまり、地元の迎える側が対話できるのも重要となり、新たな観光の視点も得られる発展的な考えた。しかし、困難は多く、その実現は進むほど、行政を含む取り組みの問題は一層大きくなったのも事実もある。

 しかし、第一として写真展、主に写真マニアを対象とする記録としての写真展と公開から、簡単なカメラによる記憶としての写真撮影の紹介による写真撮影の推進なども加え、将来を見据えた「水くみ」観察活動を進めるための写真展を目指したのである。

2.公募募集の対象

 写真家や写真マニアには「水くみ」現象のもつ、地理的、天文的、環境的視点から自然、宇宙的ロマンが得られることは簡単に理解されていた。ただ、天候、漁火の移動による変化など北斗七星の変化など撮影の検討が必要であり、頭で得た理解ほど、簡単ではなかった。でも、それらの点は写真家では他の目標でも当然の撮影選択の視点である。

 次に、それほど写真技術、知識、あるは天文写真に詳しくない方々が感動的な、印象的な体験を記録として留めるるカメラ撮影結果の提示という場合の作品の応募である。このような場合の写真はこの写真展活動の主目的であり、活動には発展を秘めたものを重視し、記録としての撮影試み応募者に皆さんに公開する、実地に現地でカメラを手にした“素人作品”に対することを審査員に補助的に説明するといった議論も行われた。

 初期、予想通り、優秀な撮影者の見事な写真を受けた。もちろん、それほど写真に知識のない方々の作品も含まれた。正直言って視野の入っていなかった、全国各地の方々の北斗七星作品も目立つようになっていく。一通りの作品がそろった5回(5年間)くらいから頃、委員会の議論からもっと広く、「水くみ」でなく「北斗七星」でも対象として良いのではないか!となり、公募要件が「北お七星」に拡大した。

3.応募写真の審査に関する要点
3-1 審査委員の構成と視点

 写真展公募は博物館活動をどうとらえ、博物館活動の先兵としてのどう取り組みかの観点からコミュニティ―などから外部委員の参加を考慮し、審査委員を特定した。

 まずは、むなかた電子博物館「北斗の水くみ」実行委員会メンバー(4~5委員)に外部審査委員として、地元写真グループ、写真技術、学校教育、天文学、科学館スタッフを揃え、審査委員会に於いて、公募の仕方、審査の要点など審査全体を議論し、評価する。一方、評価後、審議を踏まえ、次の公募要件を現審議の結果を踏まえて、次期公募要件を若干改良していくこととした。

 具体的な審議委員会の経過、会議までに事前に、全作品を審査員に見て頂き、審査員の意見を集約して、対面審査会議に参加頂き、それぞれの作品の議論を続け、ランク付けというプロセスをとった。

3-2 審査結果の推移

 現在の写真技術は専門家に聞くとあらゆる撮影技術的条件、露出時間、画角、色彩お為のフィルター、撮影技法などAIによるような撮影技術は撮影者の手加減をこえて、ほとんど競争の余地はなく、機材の使用など“お金”で決まる状況にあることを知った。

 ただ、画角、あるいは、「水くみ」以外の臨場的環境、封入する景色の選択など、仕上げるに必要な部分のみが人間の選択に残されるようであることがわかった。

 確かに、現象に加えて、桜花、水田の逆さ水くみ、人物のシルエットなど見事な作品が集まった。初期は熱心な作者の苦悶のワンショットとか、穏やかな風景に浮かぶ水くみとか、「想い」の風景から天文写真としては優秀な星像を記録したものがあった。

 写真展中期(5回目)くらいには宗像以外の、例えば東北の灯台と北斗七星とか草原の北斗七星など含まれる景色込められた思いを、水くみ現象と別にある印象を強調する写真も見られ始めた。審査員としては写真技術が人間を上回る時代に何を見るのかに進んでいった。外国での作品はどうかなどの応募者からの相談や問い合わせもあった!

 とにかく、予想を超える作品と審査の視点を広げる必要さえ起ったのである。

 総括と今後の写真展“神の柄杓”のシンボルと天文現象として北斗七星の子午線下方通過の緯度相関に選択された緯度をもつ地域の2元的な自然条件の適合するに現象である。細かくは天文学的点では大気の浮き上がり、歳差による極軸の変化による5千年程度まで持続する考えられる点で私たちにとって永遠の光景である。それを私たちの現代的写真術と時代・文化によってどのように記録されて続いていくのであろうか?今始まった写真展は科学的ばかりでなく、時代の人間の印象の歴史を記録することになるであろう。博物館の一部がそこに住む人々の宇宙や自然との出会いや生活の快適さに気づき、広く共通する問題提起により活動が広い視野で発展することが重要であろう。写真展の目指した内容が博物館活動の目的を推進するエンジンとなるでだろうことを希望して、写真展の総括としたい。

過去の受賞作品

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