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歴史・文化

文化財を守るしくみ

はじめに

 わしは、むなかた仙人じゃ。文化財を守る仕組みを少し説明しておこうかのぉ。
  近年、文化財に対する国際的な関心が高まり、日本にも海外の文化財が数多く流入してきていると言われておる。
 そこで、日本にも、盗まれた文化財を外国から輸入したり譲り受けないことを約束する「文化財不法輸出入等禁止条約(ぶんかざいふほうゆしゅつにゅうとうきんしじょうやく)(正式名称:文化財の不法な輸入、輸出及び所有権移転(しょゆうけんいてん)を禁止し及び防止する手段に関する条約)」を締結(ていけつ)したのじゃ。また、文化財不法輸出入等規制法(ぶんかざいふほうゆしゅつにゅうとうきせいほう)(正式名称:文化財の不法な輸出入等の規制に関する法律)を新たに制定するとともに、文化財保護法(ぶんかざいほごほう)の改正(かいせい)も行われたのじゃ。(平成14年12月9日発効)

 盗まれた文化財を不法に輸出したり、輸入したり、譲り受けたりすることは、文化財を持っている国や人々に大変な迷惑(めいわく)をかけるだけではなく、文化財そのものを傷つけたり、壊したりして価値を失わせることにもつながっていくのじゃ。
 さあ、皆さんも条約を結んだ趣旨(しゅし)を踏(ふ)まえ、盗難文化財を「輸入させない!輸出させない!譲り受けない!」社会を作って行ってくのじゃ。

どんな文化財が対象となるの?

 文化財は、国の歴史や文化の正しい理解のために欠くことのできないものであると同時に、文化の向上や発展の基礎を成すものとして大変重要なものなのじゃ。
 条約の対象となるのは各国で指定した文化財じゃが、日本では文化財保護法で指定された重要文化財(国宝を含む)、重要有形民俗文化財、史跡名勝天然記念物(特別史跡、特別名勝、特別天然記念物を含む)が該当しておる。下の表を見れば、大体のところはわかってもらえるはずじゃ。

条約の対象となる日本の文化財の分類 ▼重要なもの ▼特に重要なもの
有形文化財 絵画、彫刻、陶器、古い文書など 重要文化財 国宝
民俗文化財 風俗習慣、民俗芸能やこれに用いられる衣服、家具など 重要有形民俗文化財  
記念物 化石、岩塊など 史跡
名勝
天然記念物
特別史跡
特別名勝
特別天然記念物
どんな内容なの?
盗まれた文化財は輸入できません

 条約に加入している国が指定した文化財で、博物館などから盗まれた文化財を輸入することができなくなりました。

盗まれた文化財であることを知らずに取得した場合でも10年間までは自分のものにはなりません

 もともと盗まれたものであることを知っていながら文化財を取得してはいけませんが、民法では、盗まれたものであることを知らずに買ったりもらったりした場合には、盗まれてから2年たつと買ったりもらったりした人のものになるとされています。これに対して、3年目以降であっても10年が経過するまでは、盗まれたと知らずに買った人に代金を支払えば、盗まれた人は返してもらえることになりました。文化財を買ったりもらったりしようとするときには、その文化財が盗まれたものでないかどうか気をつけましょう。

日本で文化財が盗まれた場合、外国に通知されます

 文化財保護法に基づいて指定された重要文化財、重要有形民俗文化財、史跡名勝天然記念物について、盗まれたという届出があった場合、このことが外国へ通知されます。このようにすることで、外国で輸入が規制されたり、外国へ渡ってしまった場合でも返してもらい易くなりました。

指定された文化財を輸出する場合に国の許可が必要になります

 これまで、重要有形民俗文化財については、輸出する場合には国に事前に届ければよいこととされていましたが、これからは重要文化財や史跡名勝天然記念物と同じように、国の許可が必要になりました。

先生方、保護者の方へ
輸入の規制

 文化財不法輸出入禁止条約及び文化財不法輸出入等規制法によれば、外務大臣が条約に規定する施設(国・公・私立を問わず、博物館、寺院、教会、研究所、図書館、公文書館、大学の研究機関などがこれに該当すると考えられています)から文化財が盗取された旨の通知を外国から受けたときは、遅滞なく、その内容を文部科学大臣に通知します。これを受けて、当該文化財は、文部科学省令で「特定外国文化財」として指定されます。特定外国文化財を輸入しようとする人は、外国為替及び外国貿易法(いわゆる外為法)により、輸入の承認を受ける義務を課せられます。

回復措置

 民法第192条では、動産取引の安全を図るため、取引の相手方が無権利者であっても、これを権利者であると信じて善意無過失で取引した人は、その取引によってその動産の権利を有効に取得することができることとされています(いわゆる「善意取得」の制度)。また民法第193条においては、この善意取得が成立する場合であっても、目的物が盗品また遺失物であるときは、被害者又は遺失主は、盗難又は遺失の時から2年間、善意取得者に対して無償でその物の回復を求めることができることとされています。
 文化財不法輸出入規制法は、国外から不法に輸入された文化財については発見されるまでにかなりの期間を要すると考えられることなどを考慮し、民法第193条の特則として、特定外国文化財の盗難被害者については、代価弁償を条件として、現行民法で認められている善意取得者に対する回復請求権を2年から10年に延長しました。

外国への通知

 文化財不法輸出入等禁止条約及び文化財不法輸出入等規制法によれば、重要文化財、重要有形民俗文化財、史跡名勝天然記念物が亡失したり盗取されたときは、文化庁長官がその旨を官報で公示するとともに、当該文化財が条約に規定する施設から盗取されたものであるときは、外務大臣に通知します。外務大臣は、この通知を受けたときは、その内容を遅滞なく外国に通知します。

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