自然
自然環境
空気の澄んだ日に沖ノ島からかろうじて目視することができる周囲約50km圏内には、生物が安定的に生息できる大きな陸地がありません。
そのため沖ノ島の生物の起源は、長距離移動が可能な生物か、海流に乗って運ばれた漂着物の中や鳥などの糞に紛れてきたものか、氷河期に大陸から渡ったものが取り残されたものなどが考えられます。これまでに上陸できた生物たちのなかにも島の温度や湿度、土壌成分、天敵などが原因で適応できず絶滅していったものや、船によって二次的に運ばれてきたものが島の生態系を脅かすと言うこともあったでしょう。
現在、目にすることができる沖ノ島の生物は周囲4kmの小さな島で奇跡的に適用できたものだけと言うことになります。今後沖ノ島の生物も温暖化などの気候変動に伴って進化や絶滅を繰り返し、100年後には、今とは別の生物が生息繁殖しているのかもしれません。
沖ノ島は、九州本土より一般的に温暖であるといわれていますが、沖ノ島祭祀遺跡内において2021年に設置したデータロガの計測では、最高気温27.5度、最低気温-2度でした。
夏は30度を超えることもなく、九州本土よりもむしろ涼しいうえに、冬はマイナスを記録するなど季節風の影響を直接受けていることがわかりました。
島内の湿度は、夏場はほぼ90%以上を計測し数週間は100%をキープする日もありました。
冬場は、一日のなかでの乾湿の振れ幅が大きいものの50%を下回ることはほとんどありませんでした。
島内では、対馬海流によって適切な温度が保たれ、年間の平均湿度が80%という多湿な環境であり、人の影響をほとんど受けていないという3つの条件が揃っていることで、沖ノ島に生育繁殖する動植物たちの今の状態が保たれているものと考えられます。
沖ノ島の地質
(1)沖ノ島の基底層を成す対州層群(たいしゅうそうぐん)
沖ノ島の地質は、基底層を成す対州層群(※1) とその上に堆積した白色凝灰岩(2)の2種類からなります。
対州層群は、沖ノ島の南西側にのみ地上に露出しています。
※1 対州層群とは、沖ノ島から対馬にかけてみられる堆積層で日本海の形成を考えるうえで重要とされています。
※2 白色凝灰岩とは、白色からやや緑色かかった火山由来の堆積物です。
頁岩
対州層群の岩質は、黒灰色の泥質で薄く堆積しています。このことから流れのほとんどない穏やかな水辺で堆積したと考えられます。
(2)白色凝灰岩
沖ノ島の大部分と小屋島などの岩礁は、火山堆積物からなる白色の凝灰岩から成っています。沖ノ島の北側では凝灰岩の堆積の様子が見られ、小屋島ではスコリアと呼ばれる多孔質の火山礫の集積を観察することができます。
沖ノ島での祭祀の場は、この白色凝灰岩の巨岩の転石が舞台となっています。
「沖の島漁港」の東側では、頁岩を含んだ凝灰岩が見られます。これはマグマが噴出した際に、基底層である対州層群の頁岩を巻き込んで、凝灰岩として再び堆積したものと考えられます。