自然
特集「水辺の観察」
むなかた「水と緑の会」による『水辺教室』の様子を取材しました。水辺教室は、宗像市を流れる『釣川』をフィールドとして、市内13小学校の4年生全員、28クラス約900人が受講しているもう30年近く続けられている環境教育です。
釣川は宗像市南東部、宮若市との境、吉留の新立山に源流があり、道の駅のある江口の河口まで約16キロの2級河川です。宗像市民の唯一の飲料水源、農業用水源として、まさに『命の川』です。
水辺教室では、釣川の源流から河口までを1日かけて巡り、川の周辺や田んぼ・畑、水の利用やリサイクル、水生生物を採取して水質を調べます。
学校から貸し切りバスを使ってまず川の源流へと向かいました。
車中ではフィールドワークの注意や釣川の概要の話を聞きます。
バスを降りたら徒歩で源流を目指します。
源流がある上流付近は山の中で木々に囲まれ、
水の量は少なく、ゴルゴツした大きな岩を縫うように水の流れも急で速くなっています。
また、自然のままとコンクリートの三面張りの川との比較も考えました。
そんな釣川上流の環境を学ぶため、一度目を閉じて静かに耳を澄まして、
聞こえてくる音、漂ってくる香り、肌で感じる気温・湿度など、
目で分かる事だけではなく『五感で感じる様々な情報』を観察しました。
それぞれ気が付いた事を発表しあって、みんなで理解を深めあいます。
源流を目指し、木々が生い茂る山の奥へと歩いて向かいました。
釣川の源流へ到着すると、
そこには楽器を持って待っている女性たちの姿が。
この日は特別サプライズで、水と緑の会広報部会による森の中での演奏会が開かれました。
アコースティックギターとフルート、ケーナを使った優雅な演奏で、
釣川源流に広がる自然を背景に、とても贅沢な演奏会になりました。
源流では、岩の間から湧き出す清水に触れ、口に含み・・・、水を直接体感しました。
川の様子以外にも、周囲に広がる木々の成り立ちについて、
人々が植林してきた事、山の手入れを行っていたこと、
その後人口の低下等が原因で手入れが行き届かなくなってしまっている課題点など、
様々な観点から山と木々、川について学びました。
源流を後にして、次に向かったのはホタルの里。
毎年5月下旬~6月中旬ごろには幻想的なホタルの群れ飛ぶ様子を見る事が出来る自然公園です。
まずは芝生の上にレジャーシートを敷いてランチタイム。
お昼休憩を終えて、皆で集まって水生生物に関する勉強会を行いました。
配布されたテキストを見ながら、宗像市の水事情を学びます。
水の汚れに応じて色々な生物が棲んでいるため、
どんな生き物がいるかを調べれば、その水の汚れの程度を知ることができます。
まずは水の状態によって
どのような生物が棲んでいるのかを学び、
生き物の形や名前などを学んだ上で、
実際にほたるの里に流れている小川に降りて、
虫網などを使って実際に水生生物の採集を行いました。
観察ノートに載っていた生き物が
実際に動き息づいている様子に、
子供たちの歓声が各所から上がっていました。
興味津々な様子で川の中にある石の裏を覗いてみたり、
網で川の水を掬ってみたり、
いろんな工夫を凝らしながら
様々な生き物を採集していきました。
採集が終わり、器に集めた生き物たちを観察しながら、
なんという名前の生き物なのか?どんな生き物なのか?等、
観察ノートと見比べながら学んでいきました。
玄界灘が広がる神湊へと流れつく釣川の河口に到着しました。
バスから降りて広がる砂浜へ駆け出し、最後の実習へ。
最初に向かった源流と現在いる河口との違いを直接感じながら、
それぞれの場所にあった石の形を並べて比較しました。
そして気付いた事・感じた事について手を挙げて発表しながら理解を共有し、皆で学び合っていきました。
産卵にやってくるウミガメの話も聞きました。
最後に、美しい砂浜と青い海が広がる玄界灘を見渡し、残念ながら浜辺に捨てられたゴミや、
海で漂流してきたゴミなどが様々な場所に散見していることが分かりました。
それでも地域のボランティアの方々を中心とした活動によって徐々に美しい自然を取り戻しつつあるものの、
まだ砂浜には目に見える大きなゴミだけではなく、
海によって細かくバラバラになってしまった小さなプラスティックの破片等、
自然に分解されないゴミが大量に散らばっており、
まだまだ環境美化に向けて課題が山積みである事を子供たちに伝え、
最後に全員で浜辺のゴミ拾いを行いました。
帰りの車中では、水の循環や世界の水事情についての話を聞きます。
あっという間の時間でしたが、宗像を流れる釣川をテーマに、
川の事から生き物の話、これまでの歴史の話、そして環境の話など、濃密な一日となりました。