自然
玄界灘に位置する大島は、宗像市神湊からフェリーで約30分の福岡県最大の島です。
美しい山野や豊かな漁場などの自然環境に恵まれているほか、世界文化遺産【「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群】(2017年7月登録)の構成資産として、「中津宮」と沖ノ島を遠望する「沖津宮遙拝所」があり、その自然と歴史を肌で感じることができます。
現在、むなかた電子博物館では、大島の魅力を探るプロジェクトを進めています。本特別展において、むなかた電子博物館独自の活動を報告していくほか、大島に関わる地域活動・教育活動などの取組を紹介していきます。
プロジェクトの内容や大島に関する質問・相談、「こんなことを取り上げてほしい」といった提案などがありましたら、「むなかた仙人に聞く」コーナーまで、是非お寄せください。
玄界灘・響灘にある福岡県最大の離島 大島の魅力に迫る動画を制作いたしました
福岡県宗像市にある東海大学福岡短期大学では、自分たちが生活する「宗像」地域に関する知識と経験を得るとともに、地域の課題を我が事としてとらえ、積極的に関わる姿勢を涵養することを目指した地域学習活動「宗像学」が開講されています。2017年度は「大島の魅力と課題」をテーマとして、現地フィールドワークを通じ、観光・環境・健康など、様々な観点からその探求が進められています。
むなかた電子博物館は、この取組に協力しており、その活動を追うとともに空撮映像提供などの支援を行ってきました。本トピックにおいて、東海大学福岡短期大学学生によるこれまでの活動内容や成果を紹介していきます。
まず、実際に大島のいまを体験しながら、
どのような観光アピールが可能であるか、
検討を進めました。
世界文化遺産の構成資産をはじめ、
島内の観光資源を回りながら、
その魅力と課題を考えていきました。
活動の一環として、宗像大社沖津宮遙拝所付近海岸の清掃活動を行いました。
ここ以上に漂着ゴミが目立つ箇所
(馬蹄岩付近、三浦洞窟付近等)
がありましたが、
その清掃には十分な準備が必要と考えています。
(注:2017年11月11日、大島北西部の漂着ゴミ清掃活動を実施しました)
大島PR映像
東海大学福岡短期大学の地域学習活動「宗像学」に参加している学生によって、「学生目線による大島の魅力発掘」をコンセプトとした映像作品が制作されました。 学生達は何度も大島に足を運び、素材となる写真や動画の撮影、映像の編集作業に勤しんでいました。
監督を務めた同短大生の新田あかねさんによると、「大島のことを知らない若者に、大島の自然環境や風景などの魅力を伝えたい」という思いを表現したとのこと。むなかた電子博物館としても、一部映像の提供という形で映像制作の協力を行いました。
以下に、その作品を公開いたします。是非、ご感想やご意見などをお寄せ頂ければと思います。なお、この作品は2017年9月18日に開催された「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2017 IN 福岡(宗像会場)」においても上映公開されました。
市民の活動
世界文化遺産「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」の構成資産である宗像大社沖津宮遙拝所(宗像市大島)。はるか北方に沖ノ島を望むこの周辺海岸一帯には、他地域の海岸部と同様、漂着ゴミにどう対処するかという問題があります。漂着ゴミは海流の影響のもと、繰り返し大量に漂着するため、一度きりの清掃活動で解決するものではありません。
2017年11月11日(土)、沖津宮遙拝所周辺海岸一帯において、市民による合同清掃活動が実施されました。参加したのは、宗像・沖ノ島世界遺産市民の会会員、福岡県立宗像中学校の生徒、東海大学福岡短期大学の学生など、あわせて65名。当日は天候にも恵まれ、水平線上に浮かぶ沖ノ島もはっきりと見ることができました。
宗像市世界遺産登録推進室の岡さんからの説明のもと、所定の分別ルールに基づき、協力して海岸の漂着ゴミを回収していきました。大量のペットボトルや発泡スチロールなどのほか、漁業用フロート・ドラム缶のような大型のゴミもあり、回収には大きなマンパワーが必要となりました。
宗像・沖ノ島世界遺産市民の会は、宗像市の声掛けのもと、世界遺産登録の推進活動を主目的として、コミュニティ運営協議会・産業団体・市民活動団体など、21団体のメンバーから構成された市民団体です。同会は、啓発・イベント・観光ワーキンググループと保存管理ワーキンググループからなり、世界遺産登録がなされたのちも、ボランティアガイドの展開や、世界文化遺産の保全に向けた啓発・調査活動、構成資産の見回り・環境整備などについて継続的に取り組んでいます。今回の活動には15名が参加し、どのグループよりも早く清掃を開始するなど、その経験を十分に活かしていました。
福岡県立宗像中学校は、併設する宗像高等学校とともに、世界文化遺産をはじめとした宗像地域の学習について積極的に取り組んでいます。その一例として、総合的な学習の時間を活用したフィールドワークを実施されているほか、同校の文化祭では、歴史研究会を中心とした活動報告や研究成果発表が毎年継続して行われています。
今回の活動もその一環と位置付けられ、宗像中学校の歴史研究会メンバー・生徒会有志からなる13名の生徒が汗を流していました。引率の宗像高等学校・青柳先生によると、この活動の原点にあるのは、地域のために、生徒たちができること、応援できることはないか、という思いとのこと。今後は学校という枠を超えて、宗像地域の各学校とも連携を図りながら、ともに活動する仲間やその活動の幅を広げていきたいとの意気込みを語っていました。
昼までに多くの漂着ゴミの回収がなされました。その後、大島コミュニティセンターにおいて、東海大学福岡短期大学学生が制作した大島PR映像が上映される中、あかもくの汁物、魚のフライ、クチナシで色付けされたおにぎりといった、大島の特産品からなる昼食が振る舞われ、作業の疲れを癒しました。
むなかた電子博物館と協働で地域学習活動を進める東海大学福岡短期大学の学生18名は、彼らがこれまでのフィールドワークを通じて注目・問題視していた大島北西部の漂着ゴミに対処するべく、上記午前中の合同活動から引き続いて、独自の調査・清掃活動に取り組みました。
大島北西部には、大島灯台・馬蹄岩・三浦洞窟など、絶景に恵まれ、島の有力な観光資源になりうるスポットがありますが、そこに至る遊歩道付近の海岸には大量の漂着ゴミが流れ着いており、その美観を大きく損ねています。車両をそばまで乗り入れることが不可能なため、長く放置されてしまった結果、発泡スチロールは小さな破片に分かれて、さらにその回収を困難にしていました。結局、この日だけで完全に対処することはできないと判断し、遊歩道から見える範囲を中心として漂着ゴミの回収を行いました。引率の北濱先生は「ハードルが高ければ高いほど一致団結して乗り越えようとするのが若者です。各々がすべき事柄を見つけて積極的に活動してくれました。」と目を細めていました。また、「市民性教育には、教室内での学習だけでなく、このような現地での体験・実践が必要です。そして、その体験の質を高めるためにも、教育機関や行政・地域がともに現地で汗を流すことを大切にしていきたいと思います。」とのご意見を頂きました。
2017年7月に世界遺産登録がなり、日本全国から観光客が宗像に来られるようになりました。観光ボランティアガイドの方の話によると、沖ノ島に入島出来ないことへの不満は聞かれませんが、一目でもその姿を見ようと大島へ渡る人は多く、以前の何倍にもなるとのことです。我々にとって、世界文化遺産登録はその最終目的ではなく、これから、沖ノ島と関連遺産群を守り後世に伝えていかなければなりません。その使命を全うするためにも、今回の活動のような海岸清掃は大変有意義なことです。海が荒れる度に大量の漂着物が流れ着き、作業には多くの人手が必要です。地域の学習を通じて、豊かな自然など、この宗像の良いところに気づき、少しずつ自分たちでできることを、手を携えてやっていけると良いと思います。貴重な資産を守り伝えていくため、これからも多くの小中学生や高大生、市民の参加を期待しています。
今回の合同清掃活動は、各団体がそれぞれ独自に推し進めていた活動が、宗像市の仲介のもと、偶然にも恵まれて合同実施できたものです。足並みや形式にこだわるのではなく、それぞれが一歩二歩と独自に進める活動を可視化し、今回のように柔軟に合同・協働を実現していくことは、世界文化遺産の保全活動を実質的に継続していく上で有効と考えます。そして、そのような環境の実現支援こそ、我々むなかた電子博物館が果たすべき重要な役割ではないかとの思いを、この取材を通じて新たにしました。
宗像市 経営企画部 世界遺産登録推進室、宗像・沖ノ島世界遺産市民の会、福岡県立宗像中学校、福岡県立宗像高等学校、東海大学福岡短期大学
※順不同
電動アシスト自転車(500円/日)は、
バスと比較すると時間やルートの制約が少なく、
しかも大島の大きな魅力である自然を体感できることから、
若者による大島周遊に最適との意見が多く寄せられました。
一方、安全のための標識やカーブミラー、
また、休憩場所の不足の指摘もありました。